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歴史的かつ文化的背景を持つ水門の復旧
鳴瀬川野蒜(のびる)水門災害復旧工事
プロジェクト担当者
土木事業本部 技術部 1993年入社
山下 章(やました あきら)
東日本大震災により資材調達に難航する場面が多々ありました。特に生コンクリートの調達が難しく、使用日のかなり以前から予約する必要があり、工程調整に苦労しました。煉瓦積みや扉体の移設等、通常の土木工事では見ることのない工種もあり、貴重な経験になりました。
既存の水門の背後に
新たに水門を設置
東名運河と鳴瀬川を結ぶ野蒜(のびる)水門は、高潮や洪水時に鳴瀬川から東名運河への逆流を防ぐために2003年に設置されました。景観に配慮して、2枚の扉体が観音開き式に開閉する「マイターゲート」を採用して高さを抑えた構造が特徴です。当工事では、堤防のかさ上げに伴い、既存の水門を残したまま、背後に新たな水門を設置しました。
- SCENE
- 01
支持層を確認し、杭を確実に打設する
野蒜(のびる)水門は地中に打ち込んだ基礎杭(鋼管杭)で本体を支える設計であり、杭の先端を地中の固い地盤(支持層)に貫入させることがポイントです。支持層が硬質な岩盤で海岸に向かって傾斜しているため、ハンマーで基礎杭を地中に打ち込む通常の打撃による工法では杭の先端が横滑りする可能性がありました。そこで、支持層までの地盤を削孔して杭を埋め込む「鋼管ソイルセメント工法」を採用しました。また、ボーリング調査にて複雑な傾斜を再確認することで、杭の長さの不足を防止しました。
- SCENE
- 02
鉄筋の錆を防いで耐久性を向上
水門は海岸に近いため、コンクリート内部の鉄筋に錆が発生する恐れがありました。錆の原因となる塩分はコンクリートのひび割れから侵入するため、温度管理を工夫してひび割れを抑制し、鉄筋にも防錆剤を塗布しました。
- SCENE
- 03
材料と施工方法を忠実に再現
水門の周囲には、明治時代の野蒜(のびる)築港事業で整備された煉瓦造りの橋台や国指定の重要文化財である閘門が残されています。既設部は景観に配慮して表面に煉瓦装飾が施されているため、新設する水門にも煉瓦を貼ることになりました。既設部と調和を図るため、煉瓦は既設部の施工を担当した業者に特注し、通常の煉瓦よりも高い温度で焼成して風合いを再現しました。また、既設部と同じ「イギリス積み」と呼ばれる積み方を採用し、熟練の職人の手で一つ一つ煉瓦を積み上げました。
- SCENE
- 04
60tの扉を1mmのズレなく移設
水門の扉体は既設水門から移設して再利用しました。移設した扉体の1枚の重さは約60tもあります。この工程では、550tクレーンを使用して扉体を吊り上げる方法を採りました。開閉の繰り返しや、震災時の津波によって水門本体との接続部の接触抵抗が大きくなっていたため、水門から扉体を外す作業は難航。扉体の下部に大型の油圧ジャッキを3台設置し、微調整しながら作業を進めました。また、鳴瀬川の河口部であり風の影響が懸念されたため、作業中止風速を6m/秒と厳格化して作業に臨みました。幸い当日は天候に恵まれ、取り外しには時間を要しましたが、移設先への設置はスムーズに完了しました。
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