2022.05.16
お知らせ

地盤改良と同時に地中に炭素を貯留する技術の開発を加速

カーボンニュートラル社会の実現へ、使えば使うほどCO2を削減する「ネガティブエミッション技術」

技術の概要

不動テトラ(社長 奥田眞也)とソイルテクニカ(社長 西川晋司)は、地球温暖化の抑制を目指す脱炭素社会に向けて、砂地盤の液状化対策を応用した炭素貯留技術の開発に着手しました。バイオマス混合材料をサンドコンパクションパイル(SCP)工法の中詰め材として地盤中に打ち込み、液状化対策を行うと同時に炭素を地盤中に貯留します。地盤改良の施工に伴って重機から排出される二酸化炭素(CO2)よりも、地中に炭素を貯留する量の方が圧倒的に多いので、トータルでCO2を削減します。この新技術は、使えば使うほどCO2を削減する=正味としてマイナスのCO2排出量を達成した「ネガティブエミッション技術」となります。
2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、開発を加速させています。

バイオマス材料(竹チップ)バイオマス混合材料製造状況

開発の現状

2021年に不動テトラ総合技術研究所の多目的試験フィールドで、SCP工法の一つである静的締固め砂杭工法(SAVEコンポーザー)を用いた実証実験を行いました。バイオマス材料としてチップ状に細断した竹とリサイクル材料である再生砕石を、同体積で混合したものをSCP中詰め材料として使用した結果、従来の砂杭と同程度の強度と出来形が得られることと、炭素貯留を確認しました。現時点で確認できた成果は、下記の通りです。
・ バイオマス混合材料で、SAVEコンポーザーの施工が可能であること
・ バイオマス地盤改良杭で行った標準貫入試験より、砂杭と同等の締まり具合(N値)であること
・ 施工2か月後でも地中(地下水位下)のバイオマス混合材は、腐朽などの変状がなく安定した状態であり、炭素を貯留していること
・ バイオマス地盤改良杭の杭底部まで、全ての深度で設定通りの直径φ0.7m程度の出来形であること(掘り起こしにより確認)
SAVEコンポーザー施工状況掘削して確認した出来形

バイオマス材料をSCP中詰め材へ

バイオマス材料は光合成により空気中のCO2を吸収しています。今回、バイオマス材料として竹を選定した理由は、放置竹林による「竹害」対策を兼ねるためです。竹は成長が早く繁殖力も強いため、手入れをしていない竹林は周囲の雑木林や広葉樹林を侵食して、枯らしてしまいます。自然界の植物は、枯れると菌によって腐朽し、蓄えていた炭素をCO2として大気中に放出します(炭素循環)。そのため、バイオマス材料を腐朽させずに貯留する技術は、とても重要になります。
液状化防止対策で使用するバイオマス混合材料は、地下水位以下の深度に留まるため、空気中の酸素に触れることがなく、腐朽しません。また、再生砕石との混合材料としたのは、再生砕石が廃コンクリートからのリサイクル材であり環境負荷を低減できることと、再生砕石のアルカリ性によりバイオマス材料の腐朽をさらに抑制できるためです。

SCP工法との組み合わせによる効果

バイオマス材料は、チップ状や粒状のため運搬性に優れ、種類も竹に限らず木材やバイオ炭やバイオマス燃料の焼却灰など、様々な材料を適用することが可能です。また、地盤改良工法として半世紀以上の歴史と多数の施工実績があるSCP工法の技術を応用することで、これまでの地震で液状化を防いできた品質に対する信頼性、および全国的な要望に応えることができる施工体制(人員、機械)を供給することができます。

CO2排出量の試算

右の棒グラフはSCP工法(SAVEコンポーザー)で液状化防止対策工事を施工した際の、対象土量1m3当たりのCO2排出量を試算※したものです。試算の対象は、材料の採掘・製造から運搬(竹チップは長距離のダンプ運搬も考慮)、地盤改良の施工、残土の搬出まで含んでいます。
SCP工法は、現場への砂の搬入や施工時に重機からCO2が排出されることになりますが、材料を砂からバイオマス混合材料に変更することで、地中に炭素を貯留することができます。CO2換算量は、施工に伴い排出されるものよりも地中への貯留量が多く、その結果全体収支でマイナスにすることができます。試算したケースでは、従来のSCP工法が発生させるCO2排出量に対し、【約600%】のCO2削減効果が見込めることになります。

※CO2排出量の試算に用いたモデル現場の条件
 SCP工法(SAVEコンポーザー)のCO2排出量を試算するため、
 モデル現場を設定して「改良対象土量当たりのCO2排出量」を算出しました。
 モデル現場の条件は下記の通りです。
  想定現場:関東エリア中央付近
  改良対象土量:縦50m×横50m×深さ15m= 37,500m3
  改良目的:液状化対策

  改良仕様:下表の通り

今後の展望、将来の見通し

◆ 現在、研究機関との共同研究に向け、準備を進めています。バイオマス混合材料をSCP工法の中詰め材料へ適用した際の、力学特性の解明や腐朽防止技術の証明などを研究していく予定です。
◆ バイオマス材料の調達については、地方自治体との協調体制も視野に入れ、地域に応じた様々なバイオマス材料の適用を目指していきます。さらには、バイオマス炭やバイオマス燃料の焼却灰など、適用を拡大する開発も進めていきます。
◆ 使えば使うほどCO2を削減する、不動テトラ独自の「ネガティブエミッション技術」の実用化へ、開発を加速させていきます。そして、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、社会に貢献していきます。