2023.12.01
お知らせ

環境負荷を大きく低減する地盤改良工法 「リソイルPro工法」を開発

脱炭素社会の実現に向けた新たな地盤改良技術 建設発生土を有効活用しCO2排出量を削減

この度、不動テトラ(社長 奥田眞也)とソイルテクニカ(社長 西川晋司)は、建設現場で発生する土(建設発生土)を地盤改良工事に活用する技術「リソイルPro工法」を開発しました。この工法は建設発生土を改質せずに地盤改良材として利用することにより、サンドコンパクションパイル工法で使用する中詰め材料の搬入や発生土の搬出といった運搬・処分に関わる環境負荷、砂という自然材料の採掘による環境負荷を低減し、コストダウンも図ることができます。

技術の概要

液状化対策として適用されるサンドコンパクションパイル工法(当社商品:SAVEコンポーザー)は、中詰め材料として一般的に良質な砂が使用されますが、その他に砕石やスラグ等の礫状の材料も使用できます。
しかし建設発生土は、粒子の細かい土(シルトや粘土)が含まれることが多く、そのままでは発生土が施工設備内で詰まってしまい、材料として使用できませんでした。そこで、発生土を改質※)して再利用する技術を現場で実用していました。この技術は、自然材料の枯渇や建設発生土の処分問題を解決する一方、発生土を改質する際のCO2排出や、作業スペースと人手が必要となること、SAVEコンポーザーより施工能率が下がるといった問題がありました。
今回開発した「リソイルPro工法」は、SAVEコンポーザー施工機に新たな材料供給システムを導入することにより、発生土を改質せずに中詰め材料としてそのまま利用できる範囲を拡大しました。この技術により、地盤改良工事のコストダウンに加えて、CO2排出量の削減などの環境負荷を大きく低減し、社会課題の解決に寄与します。

※)改質とは、建設発生土にセメント、石灰、礫材などを混ぜて性状を変えることを指しています。

 

「リソイルPro工法」の施工状況

 

            「リソイルPro工法」の概念図      発生土を利用可能にした新たな材料供給システム

 

「リソイルPro工法」の特長

① 新たな材料供給システムを装備(特許4件取得)

本工法は、SAVEコンポーザー施工機に装備される砂投入バケット・砂受けホッパー・砂通過ケーシングを改良した材料供給システムによって、材料通過性(材料が詰まらずに装備内を通過する性能)を向上させました。

②建設発生土を改質せず適用できる範囲を拡大、発生土処分の課題を解決

工事で発生する建設発生土は、改質すれば地盤改良材として利用可能となるケースもありましたが、本工法に装備した新たな材料供給システム用いることによって、改質せずそのまま利用できる材料の範囲が広がりました。

③環境負荷低減(CO2を約50%削減)

従来のSAVEコンポーザーは、良質砂を採取地から運搬・搬入して使用し、施工で発生した盛り上がり土を現場から搬出していました。本工法では、土砂を搬入搬出する工事車両の台数が激減し、それによる環境負荷が大きく低減します。加えて、良質砂の採取量も大きく減少します。これにより、CO2排出量はSAVEコンポーザーに比べ最大50%削減でき、トラック運転手の逼迫という社会課題の解決にも寄与します。

④自然材料採取による環境破壊の防止

貴重な自然材料である山砂や海砂を採取する量が削減できるため、砂の枯渇問題や、採取地の森林伐採などの環境破壊を防ぐことができます。

⑤建設発生土の使用によりトータルコストを約30%ダウン

建設発生土使用に伴う施工能率低下の可能性はありますが、良質材料の購入費用と発生土の運搬処分費に加え、改質に必要であった設備と時間、人員の削減が大きく見込まれるため、従来工法と比較してコストダウンできます。

なお、「リソイルPro工法」による液状化対策はSAVEコンポーザーと同程度の性能を有しています。

SAVEコンポーザー(良質な砂),SAVEコンポーザー(改質)と「リソイルPro工法」との比較

適用市場

建設現場で発生する土砂の処分は、コストと環境面で負荷となっています。この土砂の運搬作業は、運転手の過重労働や、運搬ルート周辺地域の排気ガス発生等の問題も抱えています。また、大雨に伴う盛土の崩落による事故発生により、盛土規制法が施行され、土捨て行為や一時的な堆積も規制の対象となる可能性があります。
このような現場の問題を「リソイルPro工法」が解決します。
本工法は、液状化対策が必要で建設発生土が生じる現場(例えば、建築現場の山留掘削で処分土が発生する現場)を適用市場と考えています。また、これまで利用先が見つからず受入地に搬入されている発生土を有効活用できるような液状化対策工事でも、本工法の適用が期待できます。

 

今後の展望、将来の見通し

  • 材料の通過性が向上した「リソイルPro工法」を用いることで、現地発生土を利用できる範囲が大幅に広がりました。今後は材料の適用範囲をさらに拡大し、より多くの発生土を利用するための技術深化を図り、サンドコンパクションパイル工法の環境負荷低減を目指していきます。
  • 不動テトラは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同しており、CO2排出量を指標とした削減目標の設定と進捗の管理に取り組んでいます。本工法を用いることで、Scope3(事業者の活動に関連する他社の排出)のCO2排出量は大きく削減できることが期待されます。弊社は現在取り組んでいるScope1(自社事業から直接的に排出されるCO2)とScope2(エネルギーの使用に伴う間接排出)も併せて、CO2排出量を削減していきます。
  • 砂の使用による自然材料の枯渇や建設現場での発生土処分は、以前から問題視されていました。近年では、物価や燃料の高騰がそれに拍車をかけており、より一層の脱炭素社会の実現に向けた技術開発のニーズが高まっています。不動テトラは、脱炭素・リサイクル・自然共生に対応する技術を開発・導入し、防災・減災と環境負荷低減の両面で社会課題を解決し、脱炭素社会の実現と国土強靭化に貢献してまいります。